福岡市の失敗から学ぶ、市民向けSDGsイベントの作り方。
どうもコージコーダイ(@kodai_chi_koji)です。
さて、アジア太平洋都市サミットが主催する「SDGsを考える市民講演会」に参加してきました。
事務局は福岡市にありますので、実質福岡市の主催するイベントと考えていいでしょう。
SDGsって何なん? って人は先に以下を読んでください。
>>>【子どもにも分かる】SDGs(MDGs)と国連について簡潔にストーリーで解説するよ。
後から気分を害されると嫌なので、頭でしっかりと批判しときます。
カレーを食べれると聞いて参加したのに、出てきたものはハヤシライスだった。まさに、こんな感じでした。
見た目はそれっぽい、でも全然ちゃうやん。
- じゃあどこらへんがハヤシライスだったの?
- どこをどう変えたらカレーになったの?
っていう点から今回のイベントを批判的に整理しながら、市民を対象にしたSDGs関係のイベントがどうあるべきかについてここでは述べたいと思います。
動画でもこの件に関わる話をしていますので、もしよかったらどうぞ。
目次
「SDGsを考える市民講演会」の流れと目的
今回のイベントは大きくこんな流れで進みました。
- 副市長挨拶
- 国連副事務総長からのビデオメッセージ
- UNDP駐日代表事務所 駐日代表からの講演
- Deep Green Consulting 代表からの講演
- 吉本芸人3組による漫才
事前に案内されていたチラシには、
“持続可能な開発目標(SDGs)”とは何か、
なぜ取り組まなければならないのか
私たちが具体的にできることは何かについて、
一緒に考えてみませんか。
とありましたので、とりあえずこれを暫定的にイベントの目的だと理解して話を進めましょう。
これについては、細かくイベントの内容を振り返る中で実際の目的がどこにあったのかについて整理していきたいと思います。
各プロブラムから見える課題
各プログラムごとに何が話されたのか、そしてどう改善できるのかについて細かくみていきたいと思います。
副市長挨拶
行政で一瞬でも働いたことがある人にとっては常識なんですが、市長や副市長の挨拶を本人が考えることはまずありません。
市長や副市長がスピーチする場合は、そのイベントを企画した部署の人が原稿を作成して、市長や副市長は読むだけです。
つまり、スピーチをしっかりと聞くと主催者や企画者がどのような考えでイベントを作っているかが丸裸になります。
副市長挨拶の中で気になったところを2点だけピックアップします。
- 「世界のこと、地球のこと」という文脈のみでSDGsを語っていたこと
- SDGsの読み方を後半部分で副市長が間違っていたこと
「世界のこと、地球のこと」という文脈のみで語られる問題点
SDGsの面白さや画期性は、「世界のこと、地球のこと」だけでなく、「私たちのこと、地域のこと」として語れることです。特に、今回の講演会は「私たちができることは何か?」について考えることが目的だったはずなので、「私たちのこと、地域のこと」についての考え方が抜け落ちてしまうと、一気に市民との距離が空いてしまいます。
だから、この視点はSDGsの画期性を伝えるという点からも、今回のイベントの目的を達成するという点からも非常に大切なんです。
この文章からは、主催者がSDGsを理解しておらず、MDGsとの区別がついていないことが伺い知れます。
SDGsの読み方が間違っていたことから見える問題点
これについては、単純な話なので長々と説明しません。
福岡市役所内でSDGsというのが共通言語として日常的にまだ使われていないことが露呈されています。SDGsが採択されたのは2015年です。そんな最近の話じゃないです。
でも、まだ福岡市はSDGsを政策決定や、日常的な役所内の意思決定の際に使えていないということです。
つまりですよ、市民を対象に「具体的にできることを考えましょう」というイベントを主催している側が、具体的な行動をできていないんです。
エスディージーエスも間違いじゃないやろって思ってる人に向けての動画をつくりましたのでもしよかったらどうぞ。
国連側からのプログラム
イベント全体の中で、違和感がなかったのは、
- 副事務総長からのメッセージ
- UNDP駐日代表の講演
この2つのプログラムだけでした。
UNDP駐日代表が話の頭で発信した、
「30分後には参加者がSDGsを意識したアクションプランを立てられるようになっている」
という発言を耳にした瞬間に、このプログラム全体に流れる考えとの違いに気づけました。
このイベントの最大の失敗はここにあると考えています。
今回のイベントの目的が、
知ってもらい、考えてもらうこと
になってしまっていたんです。
これは、私がただ肌で感じただけでなくイベント冒頭で司会者の口から語られた部分です。
市長の挨拶と同じく、司会原稿も主催者がもちろん作成しているので、つまりイベントを作成する側の意図がそこにあるということです。
「知ってもらい、考えてもらうこと」の何が問題か?
SDGsは知ってもらい、考えてもらうための目標じゃないんです。
MDGs時代ならこれでもいいかもしれません。
MDGsは行動目標、SDGsは成果目標です。
SDGsという世界共通の行動計画を知って、達成のために行動をしないといけないんです。
そう考えれば、イベントの目的は必然的に「行動すること」「行動を変えること」になっていないとおかしいんです。
平和教育なんかも一緒ですが、「平和って大事だね!」って思う、考える市民をいくら量産しても、平和は維持できないんです。
平和な社会を作るための具体的な行動を知り、そして行動する市民を育てないといけない。
同じく、SDGsを達成するための具体的なアクションを考えて、行動できる市民を育てないといけないんです。
なぜ、こんなぼやっとしたイベントになるか。
それは、福岡市がSDGs達成のための具体的なアクションをできていないからです。
自分たちができていないことを人に説明できるはずがありません。
Deep Green Consulting 代表からの講演
ざっくりまとめると、
- エシカル(倫理的な)判断で消費者行動をしましょう。
- 多くの企業だってそういう考え方で動いていますよ。
という内容のプレゼンでした。
語られるのは、フェアトレードやアニマルウェルフェア、3Rなど、“いかにも”な具体的行動についてです。
そして、非常に耳に残るのは「恵まれている私たちが」という言葉のリフレイン。
果たして、私たちは「恵まれている」のでしょうか?
私は、SDGsを達成するために一番必要なのはこの議論だと思っています。
いいんですよ、エシカルな商品を買えばいいじゃないですか。
フェアトレード商品を買えばいいじゃないですか。
それ自体何もおかしくないし、間違ったことじゃないし、いいことです。
ただ、その直前にUNDP駐日代表が語った、
「SDGsの達成か、人類の滅亡か。それが問われている」
との乖離がそこにあるんです。
もう少し噛み砕きます。
SDGsはフェアトレードしたらいいよ、エシカルな消費をすればいいよっていう小さな話じゃないんです。それも含めた「包括的な目標」なんです。
それなのに!
正直、そんな話をきかんでも帰り道に参加者が口にしそうな比較的一般的になっている「フェアトレード」「エシカル」みたいなエモい言葉をこのタイミングで発信することが問題なんです。
安易な「答え」を与えることで、市民に何が起きるか。
考えることをやめます。
目の前に落ちてきた「答え」に満足しちゃうからです。
ちゃうやろ!!!!!
そんなんちゃうやろ!!!!!
そんなんして解決せんやろ!!!!!
もう、これ以上同じ失敗をするなよ!!!!!
SDGsを達成するためのキーは市民です。
市民一人一人がどれだけ自覚し、目標達成を意識した行動できるかです。
だからこそ、行政がその市民の目覚めに対してミスリードをするようなことがあってはならない。
担当者は、担当部署は!もっと勉強しろよ!!!!!
吉本芸人のネタ
ここまできたら、言わずもがなですが。
全体の趣旨が変になってるのに吉本芸人のセッションだけ突然素晴らしかった!
ってなる訳がありません。
私は、お笑いは結構好きです。
しかし残念ながら一つも笑えなかったです。
会場も笑っている人はちらほら。
それは、真面目な会の一幕だからっていう理由ではないと私は考えます。
SDGsと関係のないネタやったからです。
おそらく、福岡市からの指示があったのでしょう。
市長肝いりの事業である天神ビッグバンについての説明臭いネタや、
福岡市のアクセスの良さを妙に持ち上げたネタなど。
トランプ大統領のアメリカファースト、
小池都知事の都民ファースト、
をふと思い出してしまうような話ばかりでSDGsからものすごい速度で遠ざかっていきました。
SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」に絡めたネタを作成したとのことですが、
天神ビッグバンの経済波及効果知ってる?
8500億円やで!!
働ける人が増える! 街がうるおう! 人もうるおう!
96%が福岡市は住みやすいと言っている
佐賀と福岡市なら0:10で福岡市がいい
こんなネタに笑える?
笑えへんでしょ?
包括的な目標の話をしてる時に、何を自分らの住んでるところは素晴らしい!!
ってところだけをとにかく強調してるの?
オナニーは家でやれ。
一極集中の都市問題をどうやったら解決できるんだろうか。 住み続けたいと言っていない4%は何に困っているんだろうか。 佐賀のために、福岡市ができることは何だろうか。
それを考えるのがSDGsでしょ。
ほんまに、アホなんちゃうの。
福岡市ほどSDGsから遠い都市はないと私は思っています。
なぜなら、福岡市は消費経済で支えられている街だからです。
その消費を加速させることの、どこにサステイナビリティーがあるのでしょうか?
今回は非常に福岡市らしい講演会だった。
そして、大失敗だったと少なくとも私の目には映りました。
失敗から学ぶ、市民向けSDGsイベントの作り方
ここからは簡潔にいきましょう。
市民向けSDGsイベントを企画、主催する時に絶対に必要なポイントは以下の通りです。
主催者がSDGsの理念を理解しているか
これについては最低限以下の3点について深く理解をする必要があります
- 成果目標であること
- 開発途上国だけでなく私たちの地域社会にも関係していること
- 全ての人々が関わる必要があること
少なくとも、2030アジェンダについては熟読しましょう。
目的は知る/考えることではなく、行動することになっているか?
SDGsについて理解をしていれば、これは必然的にこうなるはずです。
「知ってます、やってません」では成立しないんです。
「もちろん知ってます、こんな行動しています」に参加者がなるためにどんな仕掛けが必要か。
という、視点でイベントを設計しましょう。
主催者自身が具体的なアクションをしているか
こんな大事な目標があるねんで、お前らやれよ!
これでは人は動きません。
自分たちは具体的に何をできているのでしょうか?
それは組織としてももちろんですが、組織の中の一人一人に目を向けると市民ですので、市民として自分は何ができているのでしょうか?
まずは、自分に問いかけてみましょう。
市民の行動は市民に決めさせよう
最終的な意思決定は誰にあるのか、それは市民です。
だから、安易な答えを与えるのはやめましょう。
考えることがストップしてしまいます。
与えられた答え、押し付けられた行動は続きません。
課題を包括的に捉え、その上で市民が自ら行動計画を作り、そしてそれをサポートするために何ができるのか。
という視点がイベントの中にあるかを見直しましょう。
って、ここまで書いてふと思い出したんですがまさに今朝、twitterでSDGsイベントを作成する上でのポイントをまとめていたんでした。
今読み返すと、今日の講演会の内容を予言するかのようなツイート。
Q ではどのようにして、行動を促せば良いのでしょう?
A 主催者側は何か日常的に #SDGs を意識した行動をしていますか?
「具体的な行動をしましょう!」
って人に言いながら、本人は何もしていないというケースが多すぎます。
実際に行動してみて、その経験をもとに発信をしましょう。— コージコーダイ●SDGs推進中 (@kodai_chi_koji) 2018年7月30日
批判的に書いてきましたが、福岡市への期待の裏返しでもあります。
九州における福岡市の果たすべき使命は大きいと思います。
今後ますます福岡市民、そして市職員、企業がSDGsに関心を持ち次々に具体的なアクションを起こすために
「私が何ができるか」を考え、
具体的アクションをしていきたいと思います。
この記事を読んで、自分もアクションするぞって思った人は是非こちらの記事を読んでください。
>>>SDGs達成のために自分ができること!アクションプランを具体的に立てよう。
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