ありがた迷惑なおもてなしをしないために落とし穴を知っておこう【むなかた観光ガイド研修】
沖ノ島とその関連遺産群の世界遺産登録で今年注目を集めた宗像市の「おもてなしガイド研修」なるものを昨年度から担当させていただいています。簡単に説明すると自治体が主催する観光ガイドボランティア育成のための研修です。
今回は、その中から「おもてなし」について、特にその「落とし穴」を中心にご紹介したいと思います。
目次
おもてなしの落とし穴
まずは次のような発問をし、参加者のガイドに対する考え方やこれまでにしてきた方法の確認から始めます。
その時その時で細かい設定は変更しますが、大枠は好きなようにガイドをしてもらいます。ペアを作ってもらって交代しながらどちらもに案内される側、案内する側を経験してもらいます。
するとですね、参加者のほとんどが(実際は全員が)典型的な落とし穴に見事にハマります。
案内役になると、それはそれはよくしゃべるんです。
知っている知識という知識を全て出し切ってくれます。
そのあとですね、振り返ってもらう訳です。
案内役の人がずっと話していませんでしたか?
どんな内容のお話をされましたか?
勘のいい方はもうお気づきでしょう。
意識せずに、観光ガイドをすると気づいたら赤い部分、つまり自分が話したいこと、自分の興味関心を中心に話を展開してしまいます。
そして、自分が話したい内容を話したいように続けるので、多くの場合一方通行で相手が口を挟むような余地はありません。
上の図を見てもらってもわかるように、もちろん相手の求めている部分と重なる部分もない訳ではありませんが、決して一致するわけでもなく、説明をしている時間は案内役を中心に動いています。
つまり、厳しい言い方をすると案内役は「自分のために」ガイドをしているわけです。
よくあるガイドではありますが、これは「おもてなし」でしょうか?
「おもてなし」のガイドとは?
おそらく、多くの人は上の図を見ながら、
「なるほどね。おもてなしとは自分のしたいことじゃなくて、相手のしたいことやしてほしいことをするんだね!」
そんな風に思われたのではないでしょうか。
残念!まだ不十分です。
もう一つの危険な要素と、もう一つの大切な要素が抜け落ちています。
さて、次の図を見てください。
無自覚が一番危ない
まずは危険な要素(上の丸)から考えましょう。
実は、自分がしたいこと(してあげたいこと)はそんなに大きな問題ではありません、意識すれば気づけるし、修正ができるからです。しかし、実は自分がやっていることの中に意識しても直せない部分があります。
例えば、自分の癖だったり、日本人「だったら」当たり前のことだったり、無意識に持っている相手への偏見からきている行動だったりします。これはなかなか気づけません。
なぜかというと無意識に行動している部分だからです。
そして、この要素の何が危険かというと無自覚に人を不快にしてしまう可能性があるからです。
これについては、他者の目から気づかせてもらうしかありません。一度、「ジョハリの窓」などの自己分析のためのワークを仲間内でやるといいでしょう。
隠れたニーズを発掘しよう
次に、大切な要素(下の丸)について。
これこそが、「おもてなし」のキモと言えるのではないでしょうか。
これまでも別の記事で何度となくいっていますが、人は自分のやりたいことや求めているものについて、意外に無自覚です。
自分も思いもしなかったけど、連れていかれたり、紹介された場所が自分の好きな場所だったら嬉しいですよね。
いわゆる友達や恋人などからのサプライズが記憶に残る思い出になる(こともある)のと同じ理屈です。
では、どのようにして相手の隠れたニーズを発掘すればいいのでしょうか?
「どこに行きたいですか?」
「何がしたいですか?」
では、表面的な相手がしたいと自覚していることしか出てきません。
相手の隠れたニーズを引き出すための「聞き方」については以下の記事を参考にしてください。
まとめ
「おもてなし」を伴うガイドについてここでは書いてきました。図にすると次のようになります。
この色が濃くなっている領域を相手に提供して、満足をしてもらうことが「おもてなし」であると考えます。
そのために必要なのは、
・自分と相手両方が何を意識しているかをまずは把握すること
・無意識に持っている考えに気づくこと
・相手が思っていることを引き出すための「聞く力」を身につけること
の三つです。
これって、改めてみると観光ガイドだけに限った話ではないですよね。
もちろん、一朝一夕でできることではありませんが意識をすることできっとあなたの「おもてなし」が劇的に変わると思いますよ。
あとは実践あるのみです!