【5分で解説】SDGsの本質は人権だった!【世界人権宣言70周年】

 
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上の名前がコージ、下の名前がコーダイです。 兵庫県生まれ、福岡市在住。2児の父。 人の意識を変え、国際協力の必要のない持続可能な社会にすることが目標です。
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どうもコージコーダイ(@kodai_chi_koji)です。

SDGs(持続可能な開発目標)について、目からボロボロとウロコが落ちる研修を受けたので、今日は気合いを入れて記事を作成しました。

あまりにもいい内容の研修だったので、ここでは丁寧な解説をします。

「いやいやザックリとした知識だけでええねん。SDGsについて簡単に教えてよ」って人はコチラをお勧めします。

目次

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SDGsを他セクターと連携して達成しよう

参加させていただいたのはこちらの研修です。

SDGsをチャンスに変える
他セクター連携方針/計画づくり 実践研修

主催:JICA東京
企画運営:(特活)国際協力NGOセンター(JANIC)
協力:認定NPO法人地球市民の会、佐賀NGOネットワーク(SaNN)、(公財)佐賀県国際交流協会
後援:(一社)SDGs市民社会ネットワーク

主催はJICAになっていますが、提案型研修なので、実質はJANICさんの研修です。

ざっくり研修の内容を説明すると、それぞれの団体が深呼吸をして、次のようなことを考えるものでした。

「SDGsの達成のための活動に取り組みたいと頭では思っていても、きっかけがないとしっかりとSDGsを組み込んだ活動の計画が練れませんよね。じゃあ、今回をその時にしましょうよ。もう一度SDGsとは何かをしっかりと団体で理解を深め、そして計画に落とし込みましょう。また、単独でその計画を実行するのではなく、SDGsが謳っているようにしっかりとマルチステークホルダーで(様々な機関や団体と協働しながら)やっていきましょう。

そして、「そのために関係団体の洗い直しから、計画の立案までJANICがサポートしまっせ!」というなんとも粋な企画でした。

JANICさんの考えたSDGs普及のための取り組みは以前大絶賛させていただいていますので是非読んでみてください。

業界最大手の一つなので、説明の必要がないかもしれませんが、JANICさんの活動を(勝手に)端的に説明させていただくと「NGOの力を最大化する」ことで社会課題解決を促進するネットワークNGOです。

もうちょい噛み砕くと「NGOのサポートをして市民活動を活性化させることで世界を持続可能に変えちゃおうぜっ!」っていうイケてる団体です。

研修の全体としてもなかなか深い学びがあり、講義とワークショップのバランスもよく、丁寧に組まれていたのですが、その中でも感動レベルの内容だったのがJANIC事務局長の若林秀樹さんの研修冒頭にあったSDGsの説明でした。

 

「SDGs」は一部分でしかない

さて、前置きが長くなりましたが、ここからが本編です。

ここでまとめている内容は、若林さんのSDGsについての考え方を私の理解で咀嚼して発信しているものです。咀嚼段階で若干私の考えも加味されていますので、内容について若林さんに責任はありません。もし不都合がありました私の段階での不理解によるものです。間違いなどありましたらぜひ問い合わせ先よりメッセージにてご指摘ください。なお、SDGsについて解説をする機会がちょいちょいあることを若林さんに話していると「(若林流の考え方を)どんどん使っていいよ」とのありがたい言葉をいただきましたので、自分の頭の整理を兼ねてここに発信させていただいています。

さて、国連やSDGsが成立するまでの流れは上のマンガなどを読んでもらえばいいのでコチラでは端折りますが、SDGsがどこに書かれているかはご存知でしょうか?

国連で満場一致で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(英語日本語[外務省仮訳])の中に書かれています。

このアジェンダには端的にいうならば、各国が(つまり、国連が)どんな思いでSDGsを作ったのか書いてあるんです。

次のような感じです。

私たちは、人間とこの地球がこの先も繁栄していくために、こんな思いで、次のような目標を立てたんだ、これからみんなで達成に向けて努力していくことをここに宣言するぞ!!

かっこいいでしょ。アジェンダ読んでみてくださいね。

私も初めて読んだ時ブルっときたのを覚えています。

 

さてここで、一呼吸入れていただきたいのです。

最近、やたら滅多にSDGsがもてはやされていますが、果たしてこのアジェンダを踏襲しているだろうか?と言う話です。

もう一度読んでみましょう。

私たちは、人間とこの地球がこの先も繁栄していくために、こんな思いで、次のような目標を立てたんだ、これからみんなで達成に向けて努力していくことをここに宣言するぞ!!

やっぱりかっこいいですね。

さて、もう一度考えてみてください。

SDGsについて世の中で議論されているときに、どうなっていますかね?

次のような状態になっていませんか?

私たちは、人間とこの地球がこの先も繁栄していくために、こんな思いで、

次のような目標を立てた(時代のニーズはこれらしい)

んだ、これからみんなで達成に向けて努力していくことをここに宣言するぞ!!

おかしくないですか?

理由が(ほとんど)消えて目標だけが残っている。

下手するとSDGsがビジネスのキーワードとして一人歩きしてしまっているように感じます。

 

それでは、SDGsの本質とはなんなのか?

さて、ではどこを見れば本質が分かると思いますか?

 

2030アジェンダに書かれているSDGsを定めるにあたっての「思い」の部分にしつこいぐらい書かれています。

それは「人権」です。

この視点でSDGsを考えることは、正直なところ若林さんの話を聞くまであまりしていませんでした。

 

改めて人権について考えてみよう

なんとなく、「人権」という言葉を耳にすると、ややこしい話が始まるんじゃないかと構えてしまいませんか?

あるいは、そういう話は苦手だと感じる人も少なくはないと思います。

それは、どうしてなんでしょうか?

 

あなたが人権という言葉を耳にした時、差別・同和問題などが真っ先に頭に出てくるのではないでしょうか?

あるいは、パワハラやセクハラなどの各種ハラスメントですか?

それとも、労働に対して賃金が保証されない(サービス残業)などでしょうか?

 

しかし、本当は上に挙げたようなものだけが「人権」ではないんです。

逆に、そして多くの日本人にとって人権=上述の様なものになっているのはそれらの人権が目に見えやすい問題として残っているからと考えられます。

何もなければ、人権というのは目に見えないんです。

そして、多くの国の人にとって人権というのは勝ち取って手に入れたものです。

また、激しく議論や衝突を繰り返し変わってきたものです。

目に見えないからこそ、私たちは人権を意識し、維持するために努力をし続けなければいけないんです。

 

日本人は、戦後に人権を「与えられた」ため、非常に人権意識が低いと考えられます。

どうしても、そのありがたみが分からないんです。

だから、それを失っている人たちの声がどうしてもうるさく聞こえてしまうのではないでしょうか。

 

さて、それでは日本人にはなかなか馴染みのない人権ってどんなものなんでしょうか?

人権規律の基礎といえる、世界人権宣言に30条にもわたって人権とは何かが書かれています。

せっかくなので、いくつかみてみましょう。(簡単に書き換えています)

  • 集会や結社の自由
  • 余暇を持つ権利
  • 法のもとに人である権利
  • 奴隷や、拷問・非人道的な刑罰の禁止
  • 政治に参加する権利
  • 国籍を持つ権利
  • 水を飲む権利

どうでしょうか?

そんなことが?っていう様なものがたくさんありますよね。

しかし、これはつまりここに書いてある様なことが保証されない人がいるということなんです。

集会を開いたら逮捕される人が、休みを与えられない人が、人であることが認められない人が、拷問を受け、非人道的な扱いをされている人が、政治に参加させてもらえない人が、国籍を持てない人が、水を飲めない人がいるんです。

様々な側面を持ち、なかなか捉えにくい人権ですが、JANICの若林さんのまとめ方が非常に分かりやすかったのでご紹介します。

 

人権とは…人間が人間らしく、尊厳を持って生きる不可侵の権利

どうでしょうか?

こう考えると人権って別にめんどくさいこととか、ややこしいこととか、苦手に感じる様なもんじゃないですよね。

当たり前になかったらあかんもんで、むしろ欠けてたらあかんもんなんですよ。

でも大事にされない。

なぜかと言うと、なんども言いますが目に見えないからです。

そして、徐々に失われていって、気づいた時にはアウト!!

ってならないために、市民である私たち一人一人が維持し続けないといけないもんなんだって思いが湧いてきましたか?

そしたら、次のステップに進みましょう。

 

世界は人権を守れているか?

世界の貧困率をご存知でしょうか?

あるいは、日本の相対的な貧困率の高さは?

今日の世界の格差がどの程度広がっているか知っていますか?

裕福な62人の資産と、貧しい36億人(世界人口の半分!)の人の総資産が同じだと言われています。

世界でどの程度の子どもが働かされているでしょう?

1億5000万人の児童労働が今もあると言われています。

各国で、政府による市民社会活動を抑圧する動きがあります。

情報が政府に規制される国があります。

日本は大丈夫でしょうか?

経済活動を優先するあまり、各地で無理な開発が行われています。

そして、終わらない紛争、武力衝突。

 

さて、世界は人権を守れているか?

人権とは…人間が人間らしく、尊厳を持って生きる不可侵の権利

問題だらけで、それらが解決されていないこの世界で人権が守られているとは到底言えませんよね。

人間が人間らしく生きることが許されない今の世の中は持続不可能なようにさえ感じます。

 

SDGsが目指すもの

ここで、SDGsが出てくるんです。

若林さんは次のようにSDGsを説明しました、

SDGsは人権の実現のための目標である

目からボロボロとウロコが落ちたのがココです。

「持続可能な開発のための目標」という名前を最初に耳にした時、「(何か新しいことをして)この世界を革新しなければいけない」んだろうなと思ったんですよ。

事実、ロゴの下にも「世界を変えるための17の目標」ってキャッチコピー入ってますしね。

 

しかし、人権という視点でSDGsを見つめ直すと、全く違って見えてきました。

以下に、若林さんがSDGsを人権的観点で言い換えたものをご紹介します。

目標1

SDGsの目標では→あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

人権の観点では→生きる権利

目標2

SDGsの目標では→飢餓に終止符を打ち、食糧の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する

人権の観点では→食料の権利

目標3

SDGsの目標では→あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する

人権の観点では→健康の権利

目標4

SDGsの目標では→すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

人権の観点では→教育の権利

目標5

SDGsの目標では→ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る

人権の観点では→女性の権利

目標6

SDGsの目標では→すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する

人権の観点では→クリーンな水の権利

目標7

SDGsの目標では→すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

人権の観点では→クリーンな燃料の権利

目標8

SDGsの目標では→すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する

人権の観点では→労働者の権利

目標9

SDGsの目標では→レジリエントなインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る

人権の観点では→科学進歩享受の権利

目標10

SDGsの目標では→国内および国家間の不平等を是正する

人権の観点では→差別されない権利

目標11

SDGsの目標では→都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする

人権の観点では→居住の権利

目標12

SDGsの目標では→持続可能な消費と生産のパターンを確保する

人権の観点では→十分な生活水準を保持する権利

目標13

SDGsの目標では→気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る

人権の観点では→環境享受の権利

目標14

SDGsの目標では→海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する

人権の観点では→水産資源の保護(持続可能な水産資源を利用する権利)

目標15

SDGsの目標では→陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る

人権の観点では→生物多様性(持続可能な形で自然を利用する権利)

目標16

SDGsの目標では→持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する

人権の観点では→法の下の平等

目標17

SDGsの目標では→持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

人権の観点では→この目標については、達成の手段のため言い換えはなし。あえていうなら結社、集会の自由などがあたるかもしれませんね。

 

言い換えると見えてくるもの

何が目からウロコだったか。言い換えるとハッキリと見えてきたものがあるんです。

それは、SDGsは何かを変える目標ではなく、「当たり前のもの(つまり人権)を回復させるための目標」だったということです。

もっと言えば、SDGsは人権を回復させ平和を実現するための目標です。

よくよく考えれば自然な目標ですよね。国連というものがそもそも第二次世界大戦後に二度と同じ過ちは繰り返さないと誓って「人権の確認と平和の維持」を目的に立ち上がった機関なんですから。

 

そして、浮かび上がってくる一つの目標

人権を軸にして各目標を読んでいくと浮かび上がってくる目標があるのが分かると思います。

それが、目標16です。

目標16の意味とは何でしょう?

SDGsには目標のさらに下にターゲットが設定されていますので、それを読むと見えてきます。

  • 法の支配、司法への平等なアクセス
  • 有効で説明責任を果たせる透明性の高い政府
  • 汚職や贈賄を大幅に減らす
  • 包摂的、参加型および代表的な意思決定の確保
  • 情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障
  • 持続可能な開発のための非差別的な法規および政策の実施
  • 暴力の防止、テロリズム・犯罪の撲滅に向けた対応

どうでしょうか、この上にあるようなものが達成されなければ他の目標も達成できないし、維持できませんよね。

つまり、この目標16は全ての目標と同時並行で達成する必要がある一つの根幹的なものなのです。

そして、我が国の状況はどうでしょうか。

法の支配が徹底されているだろうか?

政府は説明責任を果たしているだろうか?透明性はあるだろうか?

情報は公開されているだろうか?

汚職は減っているだろうか?

この目標16のターゲットに照らし合わせて考えてみると、ヒヤッとするものがありませんか?

 

2018年は世界人権宣言70周年です

これをここまで読んだ人は、少なからずSDGsに関心がある人だと思います。

SDGsに取り組む前に今一度、人権について学び直しませんか?

 

SDGsがビジネスチャンスとして一人歩きしてしまうと、人権を回復させることを目的とするものが、結局どこかで別の人権を侵害するなんていう皮肉なことになってしまうかもしれません。

 

「人権は小さなところから始まる」

これは世界人権宣言を打ち立てた中心人物の一人エレノア=ルーズベルトの言葉です。

小さなところからぜひ見ていきましょう。

あなた自身の人権は守られていますか?

あなたの家族は?友達は?

あなたの会社は誰かの人権を侵害していませんか?

私たちの国はどうでしょう?

 

参考になりそうな動画を置いておきます。

人権の物語(日本語字幕版)[ユースフォーヒューマンライツジャパン]

世界中のすべての人々のために 世界人権宣言ができるまで[国連広報センター]

世界人権宣言70周年(1948 – 2018):人権のために立ち上がろう – あなたの声を加えよう![国連広報センター]

 

この記事を読んでいる人によく読まれている、私自身のSDGsを意識した具体的なアクションについての記事はコチラです。
>>>実際に自分がペットボトルの使用を禁止して分かったこと【SDGs14:海の豊かさを守ろう】

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>>>【まとめ】包括的なSDGs17目標を包括的に徹底解説!

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